観光庁は2026年10月8日、「観光地におけるワーキングホリデーを通じた双方向交流の促進事業」の採択結果を公表しました。公募情報のページには、令和8年6月25日から8月3日までの間、実証実験の参加地域を募集し、この度、事業の選定を行ったので採択結果を公表する、と書かれています。採択された地域は、同じページに置かれた一覧のPDFで示されています。
宿泊施設や民泊を運営している側から見ると、この発表は人材の話として目に入ります。公募のページも、宿泊業をはじめとする観光産業という書き出しで背景を説明しています。ただし、ワーキングホリデーという制度そのものについて、観光庁は同じページで「旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度」と説明しています。人手の確保という言葉だけで読み進めると、この前提を飛ばすことになります。
この記事では、観光庁の2つの公募情報ページ(採択結果のお知らせと、協力地域の公募)に書かれている範囲を整理し、あわせて在留資格と雇い入れのときの手続きについて、出入国在留管理庁と厚生労働省の公開資料で確かめられることを並べます。当サイトは一覧のPDFの本文を確認していないため、採択された地域の名称と件数は書きません。発表に無い項目は、推測で埋めずに「記載がありません」と示します。
公表されたのは、実証実験に参加する地域の採択結果です
採択結果のお知らせのページは、最終更新日が2026年10月8日です。本文に書かれているのは2つのことだけです。1つは、観光庁が令和8年6月25日から8月3日までの間、実証実験の参加地域を募集したこと。もう1つは、この度、事業の選定を行ったので採択結果を公表するということ。そして採択結果として、一覧のPDFが置かれています。
募集の目的も、同じ1文のなかで示されています。ワーキングホリデー外国人材の受入環境を整備し、人材活用の在り方を検証するとともに、その成果を展開し、他の地域における同様の事例創出を促すことで、全国の観光地における持続的な人材確保等につなげること、という書き方です。ここで言われているのは実証と、その成果の展開です。採択された地域の取組がそのまま全国の仕組みになる、という内容ではありません。
ページには注記も1行あります。選定に関する個別のお問い合わせには答えられない、というものです。採択・不採択の理由を個別に尋ねる窓口は用意されていない、と読めます。問い合わせ先として示されているのは観光庁の参事官(旅行振興)で、電話番号は03-5253-8367です。公募のページも同じ番号を案内しています。
| 採択結果のページに書かれていること | 記載 |
|---|---|
| 最終更新日 | 2026年10月8日 |
| 募集した期間 | 令和8年6月25日から8月3日までの間 |
| 募集したもの | 実証実験の参加地域 |
| 今回の公表 | 事業の選定を行ったので、採択結果を公表 |
| 採択結果の示し方 | ページに置かれた一覧のPDF |
| 選定についての個別の問い合わせ | 答えられないとの注記があります |
| 問い合わせ先 | 観光庁 参事官(旅行振興)/電話 03-5253-8367 |
募集されていたのは、4つの取組を一体的に実施する地域です
公募のページ(最終更新日は2026年6月25日)は、募集した相手をはっきり書いています。ワーキングホリデー外国人材の受入及び活用に係る取組を実証実験として実施する者として、事業事務局とともに地域において取組を一体的に実施する者を募集する、という形です。個々の施設が単独で何かを導入する事業としてではなく、地域の取組として組み立てられていることが分かります。
求められている取組は4つ挙げられています。受入環境の整備だけでなく、地域との共生、帰国後の再訪につながる仕組みづくり、そして効果検証と成果整理まで含まれています。4つめがあるために、この事業は「人を呼ぶ」ところで終わらず、何が起きたかを整理して外へ出すところまでが仕事になります。
| 公募で挙げられていた取組 | 記載のまま |
|---|---|
| (1) | ワーキングホリデー外国人材の受入環境の整備 |
| (2) | 地域との共生に向けた施策の実施 |
| (3) | 将来に渡っての滞在地域との関係性の構築や、帰国後の再訪につながる仕組みづくりや、SNS等による発信の支援等の実施 |
| (4) | 実証実験の効果検証及び成果整理 |
背景として書かれているのは、宿泊業をはじめとする観光産業では、今後更なる増加が見込まれる観光需要を着実に取り込み、旅行者数・旅行消費額等を増加させ、観光立国を実現するためにも、双方向交流の更なる拡大が必要になっている、という説明です。人材の確保だけが目的として示されているわけではなく、双方向の交流という言い方が軸になっています。
手続きについては、応募書類を電子メールで提出し、件名の冒頭に「【提出】」を付ける形が案内されていました。さらに、申請書類を提出したあとに問い合わせ先の電話番号まで申請した旨を連絡するよう求める一文も、ページの冒頭に置かれています。今回の公募は締め切られていますが、提出して終わりではないという運用は、別の公募に応募するときにも効いてきます。当サイトで扱った人材育成補助金の三次公募の案内にも、提出後に電話で連絡を求める一文がありました。
観光庁の説明では、認められるのは「付随的な就労」です
公募のページには、ワーキングホリデーという制度の説明が1段落あります。二国・地域間の取決め等に基づき、各々の国・地域が、相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度であり、滞在中の諸活動を楽しむことを通じて、将来に渡っての滞在地域との関係性の構築が期待できる、という書き方です。
ここを読み飛ばさないほうがよいのは、入国の目的が休暇であることと、就労が「旅行・滞在資金を補うための付随的なもの」として説明されていることが、同じ1文のなかに並んでいるからです。常勤の人手として組み込む前提で読むと、観光庁自身の説明から離れていきます。実証実験の目的が「人材活用の在り方を検証する」と書かれているのも、活用のしかたが定まっていないからこその表現だと読めます。
在留資格の側も確かめておきます。出入国在留管理庁の在留資格の案内では、「特定活動」の該当例としてワーキング・ホリデーが挙げられています。この在留資格で本邦において行うことができる活動は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動とされ、在留期間は5年、3年、1年、6月、3月又は法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)と示されています。つまり、何ができるかは資格の名前だけでは決まらず、個々に指定された内容によるということです。
民泊の現場でいえば、清掃や鍵の受け渡し、ゲストへの応対を誰にどこまで任せられるかという話になります。ここは今回の採択結果には書かれていません。採用を考える段階になったら、在留カードと指定された活動の内容を本人の資料で確かめ、判断に迷う場合は出入国在留管理庁の窓口に確認してください。
人を雇い入れるときは、別の届出が生じます
実証実験の採択結果とは別に、外国人を雇う側には共通して生じる手続きがあります。厚生労働省の案内では、外国人を雇用する事業主に対し、外国人労働者の雇入れ及び離職の際に「外国人雇用状況の届出」を義務づけています。対象から除かれるのは、在留資格「外交」「公用」の人と特別永住者の3つです。ワーキング・ホリデーは、出入国在留管理庁の案内では在留資格「特定活動」の該当例として挙げられており、この3つのどれにも含まれていません。
届出の期限は、雇用保険の被保険者かどうかで分かれます。被保険者の場合は、雇入れのときは翌月10日までに、離職のときは翌日から起算して10日以内です。被保険者でない場合は、雇入れ・離職ともに翌月末日までとされています。届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象になります。短い期間の受け入れでも、入るときと出るときの2回あることを先に把握しておくほうが安全です。
| 雇い入れるときに確かめること | 公開資料の記載 |
|---|---|
| 届出の義務 | 外国人を雇用する事業主に、雇入れ及び離職の際の届出を義務づけ |
| 対象から除かれる人 | 在留資格「外交」「公用」及び特別永住者 |
| 期限(雇用保険の被保険者) | 雇入れは翌月10日まで、離職は翌日から起算して10日以内 |
| 期限(被保険者でない場合) | 雇入れ・離職ともに翌月末日まで |
| 怠った場合・虚偽の届出 | 30万円以下の罰金の対象 |
| 民泊で任せられる業務の範囲 | 今回の採択結果には記載がありません |
誰が雇うのかという点も、民泊では形が分かれます。自分で管理している場合は事業者が直接の雇い主になりますが、住宅宿泊管理業者へ委託している場合、現場で動く人はその管理業者の側に属していることがあります。委託の範囲と誰の業務として行うのかは民泊の運営代行・管理会社、委託せずに自分で回す場合に残る業務は民泊の自主管理に整理しています。清掃を人に任せるときの考え方は民泊の清掃にまとめました。
この発表で確かめられなかったこと
確かめられたのは、募集した期間、募集の目的、求められていた4つの取組、提出の方法、問い合わせ先、そして選定を行って採択結果を公表したという事実です。採択の中身に関わる項目は、ほとんどが一覧のPDFか公募要領の側にあります。埋めずに並べます。
| 知りたくなる項目 | 公開ページでの扱い |
|---|---|
| 採択された地域の名称 | 一覧のPDFに掲載。当サイトは本文を確認していません |
| 採択された件数 | 一覧のPDFに掲載。本文には書かれていません |
| 実証実験の実施期間 | いずれのページにも記載がありません |
| 支援の内容・上限額 | 本文に記載がありません(公募要領に掲載) |
| 応募できる者の要件 | 本文に記載がありません(公募要領に掲載) |
| 受け入れる人数の規模 | 記載がありません |
| 対象になる国・地域 | 記載がありません |
| 成果の公表の時期 | 記載がありません |
| 宿泊事業者が個別に参加できるか | 記載がありません |
公募要領はPDFで公開されていますが、当サイトはその本文を確認していません。応募の要件や支援の条件を調べるときは、ページに置かれている公募要領を直接読んでください。なお、今回の公募は令和8年8月3日17:00で締め切られています。これから応募できる案件ではありません。
民泊の運営者が今できる確認の順番
1つめは、採択結果の一覧を自分で開いて、自分の地域が入っているかを見ることです。入っていれば、その地域で何が始まるのかを、自治体や観光地域づくり法人の発信で追えます。入っていなければ、今回の実証の直接の対象ではありません。募集の目的に「他の地域における同様の事例創出を促す」と書かれているため、成果が出てから動く形になります。
2つめは、制度の性格を前提に置くことです。観光庁の説明では、認められているのは旅行・滞在資金を補うための付随的な就労です。常勤の人手を前提に運営を組み替える材料としては読めません。いま人手がかかっている作業を洗い出し、切り出せる単位に分けておくほうが、受け入れの可否を判断しやすくなります。家主不在型のように委託が必要な形かどうかでも、人の手配の仕方が変わります(家主居住型と家主不在型)。
3つめは、雇う段になったときの手続きです。在留カードで在留資格と指定された活動を確かめ、雇入れと離職のそれぞれで外国人雇用状況の届出を行う。この2点は、今回の実証実験とは関係なく、外国人を雇うすべての事業主に共通して求められているものです。
この記事は、観光庁の公募情報ページ2件と、出入国在留管理庁・厚生労働省の公開資料に書かれている範囲を整理したものです。制度の当てはめについて最終的な判断が必要な場合は、住宅宿泊事業の届出先である都道府県知事等の窓口、在留資格については出入国在留管理庁、雇用の届出についてはハローワークに確認してください。
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