旅行トレンド/データ

旅行需要の動向を月次データで確かめる|2026年は前年割れが続く

旅行需要がいま伸びているのかを観光庁の宿泊旅行統計調査で確かめます。2026年1月から7月の延べ宿泊者数は7か月とも前年同月を下回り、外国人は6月に前年同月比-14.0%でした。速報の段階で符号が入れ替わる点まで整理します。

料金を上げるか下げるか、部屋を増やすか見送るか。判断の手前で確かめておきたいのは、旅行の需要そのものが伸びているのか、落ちているのかです。

公表資料での答えははっきりしています。観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、2026年1月から7月までの延べ宿泊者数は、7か月とも前年同月を下回っています。下げ幅が大きいのは外国人のほうで、6月は前年同月比-14.0%でした。2025年(令和7年)の年間確定値では外国人が前年比+9.4%と伸びていたので、そこから方向が変わったことになります。

ただし、この一行をそのまま事業計画へ書き写すのは危ないです。宿泊旅行統計調査は同じ月の値を二度公表しており、第1次速報値と第2次速報値でプラスとマイナスが入れ替わった月が、2026年に入って2回あります。速報の段階で見た向きが、翌月にはひっくり返ることがある、ということです。そしてもう一つ、民泊(住宅宿泊事業)の実績は前年同期比130%台で公表されています。全体が前年割れなのに民泊は増えている、という二つの数字は矛盾していません。

この記事では、月ごとの値がどう並んでいるか、年間確定値と比べて何が変わったか、速報段階での改定がどれくらい起きているか、民泊側の数字を全体の傾向と一緒に語れない理由、この統計から読み取れないこと、そして数字を引用するときの手順を、公表資料の表記にそって整理します。資料に載っていない項目は、推測で埋めずに掲載がないと書きます。

2026年に入ってからの7か月は、すべて前年割れ

まず並べます。観光庁は毎月、宿泊旅行統計調査の結果を報道発表しています。そこに書かれている延べ宿泊者数と前年同月比を、2026年1月から7月まで拾ったものが次の表です。

対象月 延べ宿泊者数(全体) 日本人 外国人 公表段階
2026年1月 4,546万人泊(-7.0%) 3,263万人泊(-3.3%) 1,283万人泊(-15.3%) 第2次速報値
2026年2月 4,765万人泊(-0.6%) 3,362万人泊(-1.6%) 1,404万人泊(+2.0%) 第2次速報値
2026年3月 5,441万人泊(-2.0%) 4,013万人泊(-1.4%) 1,428万人泊(-3.6%) 第2次速報値
2026年4月 4,911万人泊(-7.2%) 3,374万人泊(-5.5%) 1,536万人泊(-10.8%) 第2次速報値
2026年5月 5,429万人泊(-3.2%) 3,978万人泊(-0.9%) 1,451万人泊(-9.0%) 第2次速報値
2026年6月 4,582万人泊(-8.4%) 3,360万人泊(-6.3%) 1,222万人泊(-14.0%) 第2次速報値
2026年7月 5,467万人泊(-3.5%) 4,110万人泊(-3.1%) 1,358万人泊(-4.6%) 第1次速報値

全体は7か月とも前年同月比がマイナスです。幅は-0.6%から-8.4%まで。日本人も7か月ともマイナスで、-0.9%から-6.3%の範囲に収まっています。いちばん大きく動いているのは外国人です。プラスになったのは2月の+2.0%だけで、あとはマイナス。しかも1月の-15.3%から6月の-14.0%まで、二桁のマイナスが3か月あります。

2026年1月から7月までの延べ宿泊者数の前年同月比を、日本人と外国人に分けてゼロ線から下向きに伸ばした棒グラフ。日本人は-0.9%から-6.3%の範囲、外国人は2月の+2.0%を除いてすべてマイナスで、1月-15.3%と6月-14.0%が最も深い
ゼロ線より下が前年割れです。日本人の振れ幅は小さく、外国人だけが大きく下へ伸びています。7月は公表段階が違う第1次速報値です。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」の各月の報道発表(確認日 2026-09-08)

日本人と外国人を分けずに全体だけを見ていると、この差に気づけません。全体の-3.5%は、動きの小さい日本人と、大きく下げた外国人を混ぜたあとの数字です。外国人の割合が高い物件と、ほとんど国内客という物件では、同じ「全体-3.5%」の意味がまったく違います。自分の宿の宿泊者の内訳を先に確かめてから、どちらの列を見るかを決めてください。

なお、なぜ下がったのかについては、報道発表の本文に説明がありません。為替、路線、休日の並び、前年の水準など、思い当たる要因はいくつも挙げられますが、資料に書かれていない理由を当サイトが補って書くことはしません。読み取れるのは、増えたか減ったか、どれくらいかまでです。

2025年の年間確定値と並べると、外国人の伸びが止まっている

7か月ぶんだけを見ていると、これが以前から続いている状態なのか、最近になって変わったのかが分かりません。直前の年の確定値と並べてみます。

2025年(令和7年)年間値(確定値)は、延べ宿泊者数が全体6億6,111万人泊で前年比+0.3%、日本人が4億8,118万人泊で前年比-2.7%、外国人が1億7,992万人泊で前年比+9.4%と公表されています。2025年は、日本人が減った分を外国人の伸びが埋めて、全体をわずかなプラスにした年でした

そのうえで2026年の月次を見ると、日本人が減り続けているのは同じで、埋めていた側の外国人がマイナスに転じています。全体が7か月とも前年割れなのは、この二つが同じ向きになったためです。訪日の人数そのものの動きは訪日外国人数の推移をどう読むかで扱っています。入国した人数と、宿泊施設に泊まった延べ人泊は別々の統計なので、片方の増減をもう片方の説明に使わないでください。

同じ発表には客室稼働率も載っており、2025年の年間確定値は全体で61.6%です。稼働率のほうは水準そのものが問題になるので、ホテルの客室稼働率は何%かに分けてまとめました。延べ宿泊者数の増減と稼働率の水準は別々に動きます。片方だけで需要を語らないほうが安全です。

観光庁の報道発表「宿泊旅行統計調査(2026年4月・第2次速報、2026年5月・第1次速報及び2025年年間値(確定値))」のファーストビュー
引用キャプチャ 2025年の年間確定値として、延べ宿泊者数の全体・日本人・外国人と前年比が本文に示されている報道発表です。同じ発表に2026年4月と5月の月次の値も並んでいます。 出典:宿泊旅行統計調査(2026年(令和8年)4月・第2次速報、2026年(令和8年)5月・第1次速報及び2025年(令和7年)年間値(確定値))(観光庁)(確認日 2026-09-08/表示のファーストビュー)

同じ月の数字が、速報の段階で入れ替わることがある

ここからが、引用するときにいちばん事故になりやすいところです。宿泊旅行統計調査は、同じ月の結果を第1次速報値として先に公表し、翌月に第2次速報値として公表し直します。数字は据え置きではありません。

外国人の延べ宿泊者数の前年同月比について、二つの段階を並べたものが次の表です。

対象月 第1次速報値 第2次速報値
2026年2月 -5.6% +2.0%
2026年3月 +1.8% -3.6%
2026年4月 -9.0% -10.8%
2026年5月 -13.4% -9.0%
2026年6月 -11.9% -14.0%
外国人延べ宿泊者数の前年同月比について、第1次速報値と第2次速報値を左右に置いて線で結んだ図。2026年2月は-5.6%から+2.0%へ、3月は+1.8%から-3.6%へ符号が入れ替わり、4月・5月・6月は符号が変わらず幅だけが動いている
濃い線が、プラスとマイナスの入れ替わった2月と3月です。左右の差は、公表されている二つの値を見比べたものです。 出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年2月・第2次速報、2026年3月・第1次速報)」ほか各月の報道発表(確認日 2026-09-08)

2月は第1次速報値で-5.6%、第2次速報値で+2.0%。3月は第1次速報値で+1.8%、第2次速報値で-3.6%。どちらも、増えたか減ったかという結論そのものがひっくり返っています。4月・5月・6月は符号こそ変わりませんが、5月は-13.4%から-9.0%へと、幅が大きく動いています。

ここから導けることは一つです。速報値の段階で「需要が回復した」「落ち込んだ」と結論を出さないでください。資料へ書くときは、月と一緒に公表段階まで書きます。「2026年3月の外国人延べ宿泊者数は前年同月比-3.6%(第2次速報値)」という形です。段階を書かずに並べた表は、あとから見た人がどちらの数字か判断できません。年をまたいで比べるなら確定値どうしにするのがいちばん安全です。この調査の段階の分かれ方そのものは宿泊旅行統計調査の見方に整理しています。

いま公表されている中でいちばん新しいのは、2026年8月31日付の発表にある2026年7月の第1次速報値です。上の表で7月だけ段階が違うのは、まだ第2次速報値が出ていないためです。次の発表で書き換わる可能性があります。

民泊の実績が前年同期比130%台なのは、全体の前年割れと矛盾しない

民泊側の資料を開くと、まったく逆の印象を受けます。観光庁が公表している住宅宿泊事業法の施行状況では、令和8年4月1日から5月31日までの実績が、宿泊日数624,088日(前年同期比138.6%)、宿泊者数626,765人(前年同期比130.1%)、延べ宿泊者数1,745,359人泊(前年同期比133.0%)と示されています。

同じ期間の宿泊旅行統計調査は、4月が全体-7.2%、5月が全体-3.2%です。片方は3割増、片方は前年割れ。どちらかが間違っているわけではありません。数えている対象が違います

届出住宅の延べ宿泊者数1,745,359人泊と前年同期比133.0%を、報告のあった件数34,902件と届出住宅あたり50.0人泊に分解した図。前年同期の届出住宅あたりの値が資料に記載されていないため、件数の増加分と1件あたりの変化分を分けられないことを示している
民泊側の合計は「件数」と「1件あたり」の掛け算です。前年同期の1件あたりの値が公表されていないため、133.0%の内訳は分けられません。 出典:観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」(確認日 2026-09-08)

違いは三つあります。ひとつ目は対象です。宿泊旅行統計調査は調査対象になった宿泊施設の集計で、施行状況は住宅宿泊事業者が提出した定期報告の集計です。旅館業の許可施設と届出住宅では、そもそも母集団が別です。ふたつ目は期間で、前者は月ごと、後者は2か月ごとです。三つ目が、いちばん効いてくるところです。届出住宅の数そのものが増えています。施行状況には、令和8年7月15日時点の届出住宅数が令和8年5月より1,325件増加して42,070件になったと書かれています。宿泊実績の対象になった届出住宅数は5月31日時点で41,207件、そのうち報告があったのは34,902件(報告率84.7%)です。

つまり民泊側の合計は、1件あたりの使われ方だけでなく、件数が増えた分も含んだ数字です。そして前年同期の「届出住宅あたり」の値は、このページの本文に記載がありません。したがって133.0%のうち、どれだけが件数の増加によるもので、どれだけが1件あたりの変化によるものかは、公表資料からは分けられません。件数と実績の関係は民泊の統計はどこで確認するかで扱いました。

念のためもう一つ。この二つの統計を割り算して「民泊のシェアは何%」という数字を作ることもできません。対象期間も母集団も違うためです。地域ごとの見方は都道府県別の宿泊者数はどこで調べるかにまとめています。

この統計から読み取れないこと

ここまでで分かることと、分からないことを分けておきます。分からないものを埋めた資料は、いちばん弱いところから崩れます。

読み取れるのは、全国の延べ宿泊者数が月ごとに前年と比べて増えたか減ったか、その幅、日本人と外国人の別、そして公表段階です。読み取れないものは次のとおりです。

増減の原因は、報道発表の本文に説明がありません。都道府県別・施設タイプ別の月ごとの内訳も、報道発表の本文には掲載がなく、集計結果のファイルを開くことになります。民泊の月ごとの実績も公表されておらず、施行状況は2か月ごとの値だけです。先行きの見通しは、どちらの資料にも書かれていません。「この先も下がり続ける」「そろそろ戻る」は、この統計からは出てきません

自分の宿の需要も、当然ながらここには入っていません。全国の合計が下がった月に、自分の物件の予約が増えることも減ることもあります。全国値は、自分の数字が動いた理由を考えるときの背景であって、置き換えて使える予測値ではありません。試算の枠へ落とし込む手順は民泊の売上予測はどう立てるに書きました。

数字を使うときの手順

最後に、実際に資料へ書くときの順番に直します。

公表段階を必ず添える。第1次速報値なのか、第2次速報値なのか、確定値なのかを、月と一緒に書きます。上で見たとおり、段階が変わると符号まで変わることがあります。

日本人と外国人を分けて見る。全体の値は両方を混ぜたものです。自分の宿の宿泊者の内訳に近いほうの列を使います。訪日客の消費の中身は訪日外国人の旅行消費額で扱っています。

期間をそろえる。月ごとの値と、2か月ごとの民泊の値を同じ表に並べません。並べたい場合は、期間が違うことを表の中に書きます。

民泊の前年同期比を、1件あたりの伸びとして読まない。届出住宅数が増えているため、合計の伸びには件数の増加分が含まれています。

次に使うときは出典を開き直す。宿泊旅行統計調査は毎月更新され、施行状況は2か月ごとに更新されます。手元にメモした値をそのまま使い回すと、すでに改定された数字を配ることになります。

引用の形をそろえておくと、あとから確認しやすくなります。「観光庁『宿泊旅行統計調査』によれば、2026年6月の延べ宿泊者数は全体4,582万人泊(前年同月比-8.4%)、うち外国人1,222万人泊(前年同月比-14.0%)。いずれも第2次速報値(確認日 2026-09-08)」。この形なら、読んだ相手が同じページで裏を取れます。

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