株式会社ワイズスタッフは2026年10月15日、北見市二地域ライフ推進協議会の事務局として実施した「北見市テレワークによる長期滞在ニーズ調査」の結果を公表しました。東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県に在住し、週3日以上テレワークを行い、現在の居住地域以外での暮らしに関心がある就業者516人を対象とした調査です。発表によると、回答者の73.3%(378人)が現在の居住地以外への滞在について1週間程度以上を希望し、29.8%(154人)が宿泊施設として「占有できる一戸建て(民泊等)」を選択しました。
長期滞在の需要を示す調査は、滞在日数を伸ばしたい運営者にとって引きたくなる材料です。ただし、ここに出ている割合は誰にでも当てはまる需要率ではありません。対象者が3つの条件で絞られていることを発表自身が注記しており、東京圏の就業者全体やテレワーカー全体の需要率を示すものではないと明記されています。割合を引用するときは、分母を一緒に引用しないと意味が変わります。
この記事では、発表に載っている割合と人数を設問の区分ごとにそのまま並べ、発表が自分で付けている読み方の限定を整理します。あわせて、1週間や2週間といった滞在を受けるときに制度のどこへ効いてくるのかを、住宅宿泊事業法について公表されている定めで確かめます。北見市で確認された意向が他の地域でも同じように出るかどうかは、この発表からは分かりません。
調査の対象は3つの条件で絞られた516人です
| 項目 | 発表に書かれている内容 |
|---|---|
| 実施 | 株式会社ワイズスタッフ(北見市二地域ライフ推進協議会の事務局) |
| 対象 | 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県に在住/週3日以上テレワーク/現在の居住地域以外での暮らしに関心がある就業者 |
| 人数 | 516人 |
| 目的 | 二地域居住の受け入れ環境の整備に生かすため、必要な滞在環境や支援を把握する |
| 調査期間・調査方法 | この発表には記載がありません |
対象は3つの条件をすべて満たす就業者です。地域での暮らしに関心がない人は、はじめから含まれていません。発表はこの点について、対象者内での意向であり、東京圏の就業者全体またはテレワーカー全体の需要率ではないと書いています。自分の物件が置かれた商圏の需要として読み替えられる数字ではない、という前提で見ることになります。
設問の番号はQ6やQ14として本文に現れますが、質問文の全文は公表されていません。調査期間と調査方法の記載もありません。設計まで確かめたい場合は、発表が案内している集計・分析レポートを取り寄せることになります。発表のうち、割合として読み取れるのは次の節から並べる区分だけです。
希望する滞在期間は1週間程度以上が73.3%、2週間程度以上が51.4%
希望する滞在期間は、1週間程度以上が73.3%、2週間程度以上が51.4%と公表されています。発表は、73.3%が「1週間程度」以上、51.4%が「2週間程度」以上の回答区分を合算した割合であり、いずれも北見市に限定しない別地域への希望滞在期間だと注記しています。北見市への滞在意向として示されているのは別の数値で、対象者内での70.5%だと説明されています。
宿泊の受け入れ側から見ると、1週間と2週間は別の商品になります。清掃と寝具の交換が滞在中に入るか、料金を1泊あたりで出すか期間で出すか、長く空けないために予約をどう重ねるかが変わります。発表は、仕事と日常生活を両立できる設備や、滞在期間に応じた利用条件を検討すると今後の方向性に書いています。期間ごとの料金や条件について、具体的な金額は示されていません。
宿泊施設に「占有できる一戸建て」を選んだのは29.8%です
| 区分 | 「占有できる一戸建て」を選んだ割合 |
|---|---|
| 回答者全体 | 29.8%(154人) |
| 子ども連れを希望する人 | 36.1% |
| 2週間程度以上の滞在を希望する人 | 35.1% |
| ほかの宿泊施設の種類ごとの割合 | この発表には記載がありません |
宿泊施設として「占有できる一戸建て(民泊等)」を選んだ人は29.8%(154人)で、子ども連れを希望する人では36.1%、2週間程度以上の滞在を希望する人では35.1%と示されています。ホテルや旅館、賃貸住宅を選んだ人の割合は発表に出ていないため、一戸建てが選択肢の中で何番目だったのかはこの発表からは分かりません。
協議会のコメントには、北見市はビジネスホテルが中心で、家族、特に子どもがいるファミリーが長期滞在できる宿泊施設は限られていると書かれています。あわせて、北見市にはこうした長期滞在に使える民泊施設がほとんどないという記載もあります。供給が少ない地域で意向が確認されたという構図であり、どの地域でも同じ差があることを示すものではありません。
支援策14項目で最も多く選ばれたのは一戸建て民泊の案内と利用料支援です
調査で提示した北見市の支援策14項目のうち、「テレワーク設備がそろった一戸建ての民泊の案内・利用料支援」が54.5%(281人)で最も多く選ばれました。発表は、これが14施策から最大3つを選ぶ設問での選択率であり、絶対的な利用意向率ではないと注記しています。さらに、一戸建て・テレワーク設備・施設案内・利用料支援を組み合わせた選択肢への評価であって、各要素への個別の支持率を示すものではないとも書かれています。
この注記は読み飛ばしやすいところです。選択肢が束ねられているため、設備を整えれば選ばれるとも、利用料の支援があるから選ばれたとも、この数値からは言えません。発表も、事業として進める4要素の内容は、54.5%が選択した設問項目の構成要素とは異なると書き分けています。自分の物件の設備投資を判断する材料として使うなら、要素が分かれた形で尋ねた調査か、自分の予約データのほうが確かです。
仕事を続けられる環境が、滞在先に求められています
| 滞在中の仕事環境として求められたもの | 割合 |
|---|---|
| 高速で安定したインターネット回線 | 74.4% |
| セキュリティに配慮したネットワーク | 61.4% |
| 長時間座れるオフィスチェア | 57.9% |
| 仕事がしやすい照明 | 50.4% |
| 音が漏れにくい個室・個人ブース | 49.8% |
滞在中の仕事環境として求められた項目は上の5つが公表されています。発表は、宿泊機能だけでなく、仕事を続けられる環境の整備が求められていることが分かると説明しています。回線の速度の基準や、機器の仕様についての記載はありません。どの程度の速度であれば「高速で安定」に当たるのかは示されていないため、この調査から機種や契約を決めることはできません。民泊で法令上求められる設備の範囲は民泊に必要な設備で扱っています。
行きたい理由については、具体的な行き先を選んだ475人を集計対象として、「観光やレジャー」47.4%に続き、「自然の中でゆっくり過ごす」45.5%、「地域ならではの食」43.4%、「仕事の気分転換」41.3%が上位だったと示されています。発表は、観光に加えて、仕事を続けながら食や自然を楽しむことが滞在の理由に挙がっていると書いています。行き先を決めていない41人は、この設問の対象から外れています。
発表が自分で付けている数値の限定
発表には「数値の取り扱いについて」という節があり、公表した割合がどこまでを示すものかが書かれています。対象者の条件に加えて、70.5%は対象者内での北見市への滞在意向であること、54.5%は14施策から最大3つを選ぶ設問での選択率であること、Q6は具体的な行き先を選択した475人を集計対象としていることが挙げられています。41人は「特に決めていない」を選択したため対象外だと説明されています。
最後に、調査結果は潜在需要を示すものであり、実際の予約、売上、滞在、再訪を保証するものではないと書かれています。今後の実証で行動への転換を検証するとも述べられています。意向と予約は別のものだと発表側が先に書いているため、この割合をそのまま稼働率や売上の前提に置くことはできません。収支の試算を作るときの枠の出し方は民泊の売上予測の立て方にまとめています。
背景にある空き家対策と二地域居住の制度
発表によると、この取り組みは国土交通省「空き家対策モデル事業」に採択された「北見市の二地域居住推進と連動した民泊活用による持続可能な空き家活用モデルの構築」事業と連動しており、空き家を二地域居住者の長期滞在施設として活用するものです。発表本文には、どの年度の採択かは書かれていません。国土交通省は令和8年度「空き家対策モデル事業」の採択対象を2026年7月8日に公表しており、応募は計117件、採択は36件、「新たなライフスタイルや居住ニーズに対応した空き家の活用等」というテーマでは12件が採択されたと示されています。どの事業が採択されたかは、報道発表の別添として採択事業一覧が公表されています。
二地域居住そのものについては、国土交通省が「主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点をもうける暮らし方」と説明しています。広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律が令和6年11月1日から施行され、地域と二地域居住者をつなぐ中間支援組織として特定居住支援法人が位置づけられています。全国二地域居住等促進協議会は全国二地域居住促進官民連携プラットフォームへ改組され、令和6年10月29日に設立されたと記載されています。空き家の活用先として宿泊を考えるとき、こうした制度の側からも受け入れ環境づくりが進められている状況です。
1週間・2週間の滞在は、提供日数の上限に積み上がります
長期滞在は、1件あたりの予約が長くなるぶん入れ替わりの手間が減ります。一方で、住宅宿泊事業法の届出で営む場合は、滞在が長くても人を宿泊させた日数がそのまま積み上がります。観光庁の民泊制度ポータルサイトでは、年間提供日数の上限は180日とし、地域の実情を反映する仕組みを創設したことが示されています。日数の数え方は、1年間が毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで、1日が正午から翌日の正午までと公表されています。
同じページでは、住宅宿泊事業を行おうとする者は都道府県知事等への届出が必要であることと、住宅宿泊事業者・住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者の3つの区分が示されています。日数の起算と数え方は民泊の180日の数え方、日数の上限がない営業形態との違いは簡易宿所と民泊の違いと特区民泊とはで扱っています。どの制度に乗るかで、滞在期間に関する扱いも手続きも変わります。法令の当てはめは物件ごとに違うため、最終的な判断は届出先の窓口に確認してください。
この発表に記載がないこと
| 知りたくなる項目 | 今回の発表の記載 |
|---|---|
| 調査期間・調査方法 | 記載がありません |
| 希望する1泊あたりの料金・予算 | 記載がありません |
| 一戸建て以外の宿泊施設を選んだ割合 | 記載がありません |
| 北見市の長期滞在向け民泊の施設数 | 記載がありません(「ほとんどない」との記述のみ) |
| 空き家オーナーに還元される収益の見込み | 記載がありません |
| 支援策の内容・金額・開始時期 | 記載がありません |
| 回答者が希望する滞在の時期・季節 | 記載がありません |
料金と収益に関する数値が無いのは、この調査が滞在環境と支援策への意向を尋ねたものだからです。発表は、宿泊収入から運営・維持管理費を賄い、空き家オーナーにも利益を還元できる持続可能な地域活性化モデルの構築を目指すと述べていますが、金額の裏づけは示されていません。記載のない項目を、他の地域の相場で埋めないでください。長期滞在の単価は、地域と物件の条件で大きく変わります。
自分の地域で確かめること
この発表から持ち帰れるのは、特定の条件を満たす層に長期滞在の意向があり、その層の一定割合が占有できる一戸建てを選んだという事実です。自分の物件で成り立つかどうかは、地域の制度と物件の条件を確かめてからの話になります。日数の制限は条例で地域ごとに違い、届出や相談の窓口も自治体ごとに分かれています。
物件側で先に決まるのは、使える建物かどうかです。所有していない空き家を借りて使う場合の契約の扱いは民泊に使える賃貸物件、現地にいない体制で運営する場合に残る義務は民泊の遠隔運営、相談の持ち込み先の分かれ方は民泊開業の相談先で扱っています。意向調査の割合は、こうした条件を確かめたあとで、需要があるかもしれないという仮説として置く位置づけにとどめてください。
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