合同会社甲南キッチン(兵庫県神戸市、代表社員:砂田祥平)は2026年10月21日、ホテルインフォメーションシステム「asagotta TV」に、テレビのリモコンだけで遊べるゲーム機能を追加し、2026年7月にラ・ジェント・ステイ札幌大通(北海道札幌市)へ導入したと発表しました。発表によれば、この機能は同ホテルの現場スタッフとの対話の中で出た「特に家族連れやカップルでの宿泊時に、客室内で楽しめるコンテンツがほしい」という言葉をもとに開発したもので、asagotta TVを導入済みのホテルであれば専用機器の追加なしに利用できるとしています。
民泊を運営している側がこの発表を読むとき、目に留まりやすいのは利用実績の数字です。発表は、提供開始から約3か月でほぼ全ての客室でプレイされ、利用時間は累計で約682時間になったとしています(2026年10月8日時点)。数字が1つ置かれていると、自分の客室でも同じように使われるのかを考えたくなります。けれどもこれは導入した1施設の集計として示された値で、何室の施設なのかも、何人が遊んだのかも、発表には書かれていません。
もう1つ気をつけたいのは「専用機器の追加なし」という条件です。これはasagotta TVが既に入っている施設についての説明で、何も無い客室にテレビを置けばすぐ使える、という話ではありません。民泊では客室にテレビを置かない運営もあり、条件の前提になる層がそもそも違います。
この記事では、発表に書かれている内容を発表の表記のまま並べ、同社の公式製品ページで確かめられる機能の区分と突き合わせます。そのうえで、客室に「滞在中に使うもの」を足すと民泊の側で何が増えるのかを、観光庁の公開資料に書かれている業務の範囲で整理します。当サイトはこの製品を利用しておらず、性能や他社との優劣を評価するものではありません。料金については、発表にも公式製品ページにも金額の記載がありませんでした。
発表されたのは、いまある客室のテレビとリモコンで遊べる5種類です
発表が挙げているゲームは5種類です。操作はテレビリモコンの十字キーと決定ボタンだけで直感的に行えるとされ、専用コントローラーや追加のハードウェアは必要ないと書かれています。ゲームによっては2人プレイも可能だとしています。asagotta TVを導入済みのホテルであれば、今ある客室のテレビとリモコンのまま使えるという説明です。
| ゲーム | 発表に書かれている説明 |
|---|---|
| ナンプレ | 1〜9の数字を重複なく埋めるパズル |
| リバーシ | 古典的なボードゲーム |
| 地雷探しゲーム | クラシックなマインスイーパー型パズル |
| 神経衰弱 | カードの絵柄を揃える記憶力ゲーム |
| マージパズル | 同じ色のボールを合成して育てるパズルゲーム |
発表が想定している場面として挙げられているのは、チェックイン直後の待ち時間、外出前の準備の合間、就寝前のひとときです。つまり滞在そのものを目的にした機能ではなく、滞在の隙間で使われるものとして説明されています。予約を取るための機能として紹介されているわけではない、という点は読み方として押さえておきたいところです。
発表には、導入先のラ・ジェント・ステイ札幌大通が2025年からasagotta TVを導入し、その後「コンセプトルーム機能」も採用しているホテルだと書かれています。今回のゲーム機能は、システムを入れたあとに現場との対話から足された機能という位置づけです。同社は、asagotta TV自体も「VODをやめたい」というホテルからの相談をきっかけに生まれた製品だと説明しています。
利用実績として示されているのは、1施設の集計です
発表の数字を順に並べると、2026年7月の提供開始から約3か月で、ほぼ全ての客室でゲームがプレイされ、利用時間は累計で約682時間、1日平均で約7時間になった、となります。いずれも2026年10月8日時点の値として示されています。
この数字から読めるのは、導入した施設で実際に使われたということだけです。何室の施設なのかが発表に書かれていないため、1室あたりどれくらい遊ばれたのかは出せません。当サイトは発表に無い数値を自分で割り出さない方針なので、ここで平均を作ることもしません。
遊んだ人数も分かりません。延べの時間は、長く遊んだ少数の滞在でも、短く触った多数の滞在でも積み上がります。同じ時間数が、まったく違う使われ方を指している可能性があります。家族連れとカップルという要望から生まれた機能だと説明されている一方で、どんな層がどれだけ使ったのかという内訳は示されていません。
滞在の評価や売上との関係も示されていません。発表にはラ・ジェント・ステイ札幌大通の支配人のコメントが掲載されており、客室でゆっくり楽しめるコンテンツへの要望が以前からあったこと、特別な機器や操作方法の説明が不要でフロントの負担なく提供できる点を挙げています。これは導入した施設の受け止めとして発表に載ったもので、評点や再訪の割合といった数値の変化を示したものではありません。
自分の施設で検討するなら、必要なのは他施設の延べ時間ではなく、自分の客室の数と、滞在のどの時間帯が空いているのかという情報です。公表された利用時間は、その機能が実際に動いていることを確かめる材料にはなりますが、自分の施設での効果を見積もる材料には足りません。
「専用機器の追加なし」は、下の層が入っている施設の話です
発表は、asagotta TVを導入済みのホテルであれば専用機器の追加なしに利用できるとしています。この条件を正しく読むには、成り立つための前提が層になっていることを見ておく必要があります。
同社の公式製品ページは、asagotta TVをセットトップボックスを置かずに客室の情報を1台のテレビへまとめる仕組みとして説明しています。確認日時点で標準機能として並んでいるのは、館内・周辺案内、動画視聴サービス、多言語表示、CMS連携機能、Wi-Fi情報表示、スマホからのキャストです。オプション機能として並んでいるのは、ルームオーダーサービス、混雑状況表示、メッセージランプ機能、モーニングコール機能、外国語放送、清掃インジケーター、エクスプレスチェックアウト、asagotta call、オリジナル画像表示機能です。
| 区分 | 公式製品ページに並んでいる項目(確認日 2026-10-27) |
|---|---|
| 標準機能 | 館内・周辺案内、動画視聴サービス、多言語表示、CMS連携機能、Wi-Fi情報表示、スマホからのキャスト(Chromecast・AirPlay) |
| オプション機能 | ルームオーダーサービス、混雑状況表示、メッセージランプ機能、モーニングコール機能、外国語放送、清掃インジケーター、エクスプレスチェックアウト、asagotta call(内線通話)、オリジナル画像表示機能 |
| 今回のゲーム機能 | 発表では、asagotta TVのオプション機能として提供すると記載。確認日時点の製品ページの一覧には見当たりません |
今回のゲーム機能は、発表の中でasagotta TVのオプション機能として提供すると書かれています。一方、確認日時点の公式製品ページのオプション機能の一覧には、ゲーム機能は挙がっていませんでした。発表されたばかりの機能なので、製品ページの一覧に反映されるまでに時間差があると考えられます。どちらのページを見て検討するかで、見える機能の範囲が変わります。問い合わせるときは、発表の内容を指して確かめるほうが行き違いが少なくなります。
同社の電話の仕組みについては別の発表があり、ホテル向けIP-PBX「asagotta Phone」の提供開始で扱っています。製品の系列としてはつながっていますが、今回のゲーム機能とは別の発表で、標準とオプションの区分も製品ごとに分かれています。
民泊の客室に足すと、案内と清掃の対象が増えます
客室に何かを足すとき、民泊で先に見ておきたいのは法令上の業務です。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業者の業務として宿泊者の衛生の確保を挙げ、定期的な清掃、換気及びその他の必要な措置を講じる必要があるとしています。テレビとリモコンは、宿泊者が手で触れて使うものです。遊ばれる時間が増えるほど、拭き取りと動作の確認が入れ替わりごとの作業へ加わります。
もう1つは案内です。同じページは、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保として、外国語を用いて届出住宅の設備の使用方法に関する案内をすることを挙げています。テレビの画面で遊べるようにするなら、その使い方も設備の使用方法の一部になります。発表には、ゲーム機能の画面表示が何語に対応しているかについての記載がありません。多言語表示は公式製品ページの標準機能として挙がっていますが、ゲーム機能の画面がそこに含まれるかどうかは、確認が必要な項目として残ります。言語の揃え方は民泊の多言語対応、案内に載せる項目の整理は民泊のチェックイン案内にまとめています。
清掃の側から見ると、増えるのは時間だけではありません。リモコンの電池が切れていないか、テレビが前の滞在の画面のまま残っていないか、といった確認が入れ替わりごとの項目に加わります。何を見て回るかという話は民泊の清掃に書いています。設備を1つ足すと、維持と管理の対象が1つ増えるという構図は鍵でも同じで、民泊のスマートロックで扱っています。
ここで引いている業務は、観光庁の民泊制度ポータルサイトの住宅宿泊事業者編に並んでいるものです。住宅宿泊事業とは何かという定義から、対象となる住宅、届出に必要な情報と手続き、管理業務の委託、そして事業者の業務までが同じ入口から辿れます。客室に何を置くかという話は、そのうち衛生の確保と外国語の案内の項目にかかってきます。
ここで挙げた業務の範囲は観光庁の公式ページの記載で、今回の発表の内容ではありません。法令の当てはめで迷う場合は、届出先である都道府県知事等の窓口に確認してください。
この発表に記載がないこと
| 確かめようとした項目 | 結果 |
|---|---|
| ゲーム機能の料金・オプションの費用 | 発表・公式製品ページのいずれにも金額の記載がありません |
| 導入している施設の数 | 今回のプレスリリースには記載がありません |
| 民泊・住宅宿泊事業での提供条件 | 記載がありません |
| 導入した施設の客室数 | 記載がありません |
| ゲームを遊んだ人数 | 記載がありません。示されているのは延べの利用時間です |
| 滞在の評価や売上との関係 | 記載がありません |
| ゲーム画面の対応言語 | 記載がありません |
| 今後のゲームの追加予定 | 記載がありません |
| 他の施設への展開の予定 | 記載がありません |
空欄が多いのは、調べ足りないからではありません。発表の形がそうなっているからです。当サイトは、確認できていない項目を推測で埋めません。導入を相談するときは、この表の左側をそのまま質問の一覧として使うと、確かめたいことが先に片付きます。
検討する順序は、客室の設備より前にあります
この発表から民泊の運営者が持ち帰れるのは、機能の優劣ではなく順序です。先に決まるのは、自分の客室にテレビとネットワークを置くのか、そこへ情報を出す仕組みを載せるのか、という2つです。その2つが決まっていない物件では、ゲーム機能の話はまだ出番がありません。
無人で回す運営では、客室の中で完結する機能は、問い合わせを減らす方向にも増やす方向にも働きます。操作が分からなければ連絡が来ます。発表が「特別な機器や操作方法の説明も不要」という点を導入施設の受け止めとして載せているのは、その裏返しだと読めます。仕組みに載せられる業務と人に残る業務の線引きは民泊の業務の効率化、不在を前提にした体制の組み方は民泊の遠隔運営にまとめています。
この記事は、発表企業である合同会社甲南キッチンのプレスリリースと公式製品ページ、観光庁の公開資料の記載を整理したものです。特定のサービスの利用をすすめるものではありません。製品ページの内容は更新されることがあるため、数か月後に同じ内容を確かめるときは、出典のページを開き直してください。
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