事業者・業界のニュース/ニュース

地力とNOBORDERSが空き家の事業化で提携 取得前に決まる要件

株式会社地力とNOBORDERS株式会社が、空き家をはじめとする地域資源の事業化に向けたパートナーシップ契約を締結したと発表しました。発表が挙げる5つの連携領域を整理し、物件を取得する前に制度側で決まる要件を公的資料で確かめます。

株式会社地力(京都府京都市、代表取締役:妹尾拓哉)は2026年9月25日、NOBORDERS株式会社(大阪府大阪市、代表取締役:北村裕一郎・石神幹生)と、空き家をはじめとする地域資源の事業化を推進するためのパートナーシップ契約を締結したと発表しました。発表は、NOBORDERSが持つ不動産の発掘・流通・取引支援に関する専門性と、地力が持つ宿泊事業・地域事業の事業性評価、企画、立ち上げ、運営に関する専門性を掛け合わせると説明しています。同じ内容は地力の公式サイトにも置かれ、そこからプレスリリースの全文へ進む案内があります。

他社の提携の知らせは、空き家を宿にしようと考えている人から見れば、自分の現場と関係の薄い話に見えます。それでも読む値打ちがあるのは、両社が組む理由として挙げているのが、物件の取引と、その後の事業づくりが分断されたまま計画が進むと何が起きるかという一点だからです。発表はそこを具体的に書いています。物件を取得したあとで、想定していた事業が成立しないと判明する。開業後の運営体制が整わない。つまり順序の失敗です。

そこでこの記事では、発表に書かれている連携の内容を表記のまま整理したうえで、発表が「物件取得前」に検討するとしている項目を、公的資料で確かめられる部分と、物件ごとに窓口へ確かめるほかない部分に分けます。当サイトは両社のサービスを利用しておらず、その内容を評価するものでもありません。支援の費用や実績の数値は、この発表に含まれていません。

発表の中身は、案件ごとに専門を持ち寄る体制づくりです

発表が締結したと述べているのはパートナーシップ契約です。合併や資本の関係ではなく、案件に応じて連携する体制を構築するという書き方になっています。副題には、不動産と宿泊・地域事業の専門性を掛け合わせ、物件探しから開業・運営までを見据えた支援体制を構築すると置かれています。

項目 発表の記載
発表者 株式会社地力(京都府京都市、代表取締役:妹尾拓哉)
発表日 2026年9月25日
締結した相手 NOBORDERS株式会社(大阪府大阪市、代表取締役:北村裕一郎・石神幹生)
締結したもの 空き家をはじめとする地域資源の事業化を推進するためのパートナーシップ契約
NOBORDERS側の専門性 不動産の発掘・流通・取引支援
地力側の専門性 宿泊事業・地域事業の事業性評価、企画、立ち上げ、運営
体制 物件取引とその後の事業づくりを切り離さず、案件に応じて連携する
今後 空き家や遊休不動産を活用した宿泊施設・地域拠点の立ち上げを中心に、具体的な連携案件の創出に取り組む
契約の期間・費用・対象地域の限定 記載がありません

読み取れるのは、両社が受け持つ範囲の境目です。NOBORDERSの側に置かれているのは空き家・遊休不動産の発掘から取引支援まで、地力の側に置かれているのは事業性の評価から開業後の運営までです。物件を探している人から見れば、相談する相手が別々に分かれていた状態を、ひとつの案件として受ける形に近づけるという説明になります。ただし、どちらの会社が窓口になるのか、相談の段階で費用がかかるのかについて、発表に記載はありません。

なお、地力は自社について「そもそもその場所で事業を行うべきか」という段階から関わると書いています。施設を開業させることを目的とせず、開業後も地域に根付き、継続できる事業づくりに伴走するという説明です。NOBORDERSは「日本の空き家問題を救う」というミッションのもとで『NOBORDERS不動産』を立ち上げ、空き家・遊休不動産の発掘から取引支援までを行っているとされ、あわせて『Re:LAY(リレイ)』と『空き家の進路相談』を展開していると書かれています。

「分断されたまま進む」と何が起きると書いているか

発表は連携の背景として、全国各地で空き家の増加が課題となる一方、空き家や遊休不動産を宿泊施設や地域拠点として活用したいと考える事業者や地域も増えていると述べています。そのうえで、空き家活用を継続可能な事業として成立させるためには、物件の取得や改修だけでなく、地域特性や市場環境を踏まえた事業性の判断、収支計画、許認可、開業準備、集客、運営体制の構築など、複数の専門領域を横断する必要があると説明しています。

そして、不動産取引と事業運営が分断されたまま計画が進むと、物件取得後に想定していた事業が成立しないことが判明したり、開業後の運営体制が整わなかったりすることもあると書いています。これは会社が2つに分かれている場合の話に限りません。ひとりで空き家を買って宿にしようとする場合にも、同じ順序で起こります。売買や賃貸借の契約は、制度の確認より先に締結できてしまうためです。契約を済ませたあとで、その建物では考えていた形の営業ができないと分かる。発表が取引と事業の分断と呼んでいるのは、この並び順のことだと読めます。

裏返すと、確かめる順番を入れ替えれば避けられる部分があるということでもあります。物件情報の紙に載っていない項目をどこで調べるかは民泊の物件の探し方に、向いている物件かどうかを判定する順序は民泊の物件の選び方に整理しています。空き家は建物の値段が安く見えるぶん、先に契約へ進みたくなる対象です。だからこそ、判定を前に持ってくる意味が大きくなります。

取得前に検討する項目として6つが並んでいます

発表は、想定する連携領域を5つ挙げています。案件の内容や顧客の課題に応じて、主にこの領域で情報共有や案件連携を行うという説明です。

領域 発表の記載
空き家・地域資源に関する案件情報の共有 宿泊施設や地域拠点として活用できる可能性のある物件や、空き家活用を検討するオーナー、事業者、地域に関する情報を共有
物件取得前の事業性評価 立地、市場性、法令・許認可、想定顧客、収支、運営体制などを踏まえ、物件の活用可能性や事業としての成立性を検討
宿泊施設・地域事業の企画と立ち上げ 事業コンセプト、収支計画、サービス設計、予約・販売導線、運営オペレーションなど、開業に必要な仕組みづくりを支援
開業後の運営・事業改善 開業後の集客、価格設定、業務改善、地域事業者との連携など、事業を継続させるための支援
地域・自治体・専門事業者との連携 設計者、施工会社、デザイナー、士業、運営事業者、地域団体、自治体などとも連携し、地域や事業に適した体制を構築

このうち2番目の「物件取得前の事業性評価」に、検討する項目が名前で並んでいます。立地、市場性、法令・許認可、想定顧客、収支、運営体制の6つです。他社に頼むかどうかとは別に、この6つは自分の案件でも同じように並びます。そこで、それぞれをどこで確かめることになるのかを整理しました。発表が示しているのは項目の名前までで、確かめ方は書かれていません。下の右側は当サイトが公的資料と既存の記事に当てて整理したものです。

発表が挙げる項目 自分の案件で確かめることになる先
立地 所在地の自治体。観光庁は届出の相手方を都道府県知事等としており、保健所設置市の長や特別区の長が事務を処理できるとしています
市場性 公表されている統計。物件ごとの条件で変わるため、相場の数値としては扱えません
法令・許認可 住宅宿泊事業法における「住宅」の要件(観光庁)と、旅館業に当たるかどうかの判断(厚生労働省)
想定顧客 自分の物件の部屋数と定員から組み立てる
収支 年間提供日数の上限と、条例による制限を先に置いてから積む
運営体制 自分で行う業務と、人に頼む業務の切り分け

建物が「住宅」に当たるかは、買う前に決まっています

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、住宅宿泊事業法における「住宅」の要件として、設備要件と居住要件の2つを示しています。設備要件として挙げられているのは「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」です。居住要件として挙げられているのは「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」です。

空き家を届出住宅として使おうとするとき、この居住要件の読み方が先に来ます。誰も住んでいない家屋は、そのままでは「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」には当たりません。したがって、残る2つのどちらかに当たるかどうかが問われます。どちらに当たるのかは物件と使い方によって変わり、当サイトが判定できるものではありません。届出の相手方は都道府県知事等で、都道府県知事に代わり保健所設置市の長や特別区の長が届出の受理・監督・条例制定事務を処理できることも、同じページに示されています。実際の判断は、その物件の所在地の窓口で確かめることになります。相談の持って行き方は民泊の開業を相談する先にまとめました。

住宅宿泊事業法の「住宅」は、台所・浴室・便所・洗面設備という設備要件を満たし、かつ現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者・賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋のいずれかに当たる家屋であることを示した図
観光庁の公式ページに示されている「住宅」の要件を、設備と居住に分けて並べた図です。今回の発表の内容ではありません。出典:観光庁 民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」(確認日 2026-09-28)

設備要件のほうは、建物を見た段階で見当がつきます。台所・浴室・便所・洗面設備が揃っているか、揃っていなければ足せるのか。足す前提なら、その工事は取得の判断に含める費用になります。空き家の価格が安く見えても、設備を入れ直す分まで含めて考えないと、発表が言う「物件取得後に想定していた事業が成立しない」に近づきます。費用をどの区分で押さえるかは民泊の開業費用に整理しています。

収支の枠は、日数の上限と条例で先に区切られます

発表が挙げている項目のうち「収支」は、自分で置く数字のように見えます。しかし枠の上のほうは制度で決まっています。観光庁の同じページは、住宅宿泊事業法の内容として「年間提供日数の上限は180日とし、地域の実情を反映する仕組みの創設」を挙げ、あわせて「条例による住宅宿泊事業の実施の制限」も挙げています。年間に泊められる日数には上限があり、地域によってはさらに条例で制限がかかるという構えです。

そのため、空き家の取得価格と改修費から利回りを先に出しても、上限を当てたときに数字が変わります。日数の数え方は民泊の180日に、上限を踏まえた枠の作り方は民泊の収支計画に置いています。地域ごとの制約をどう調べるかは民泊の立地の選び方にまとめました。制度の上限を先に置き、そのあとで費用を積むという順番にすると、物件を見に行く前でも成立しない条件がふるい落とせます。

旅館業として使う場合は、判定の軸が別にあります

空き家を宿泊施設にする入口は、住宅宿泊事業法の届出だけではありません。厚生労働省は、旅館業に当たるかどうかの判断について公表しています。「宿泊料」は名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるもの、たとえば休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費などが含まれるとしています。営業とは「社会性をもって継続反復されているもの」であり、「社会性をもって」とは社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われるものであると説明しています。旅館業とアパート等の賃貸業との違いとしては、施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有しないことが挙げられています。

同じ資料は、許可を受けないで旅館業を経営した者について、罰則が定められていることも示しています。どの入口を選ぶかで、建物に求められるものも手続きの相手も変わります。当サイトは条文の解釈を断定しません。判定の考え方の整理は民泊と旅館業法と民泊の許可にありますが、自分の物件がどちらに当たるかは、所管の窓口で確かめてください。発表の言い方に戻せば、これが「法令・許認可」を物件取得前に置く理由です。

この発表に記載のないこと

空き家の活用を人に相談するかどうかを考えるときに知りたくなる項目のうち、この発表に書かれていないものを並べます。埋めずにそのまま示します。

知りたくなる項目 この発表での扱い
契約の期間と範囲 記載がありません
相談・支援の費用 記載がありません
対応できる地域の限定 地力が支援している地域として京都府京都市、鹿児島県奄美群島、奈良県奈良市、山口県下関市、岡山県高梁市などが挙げられています。限定についての記載はありません
具体的な連携案件 記載がありません(今後の創出に取り組むとされています)
宅地建物取引業や住宅宿泊管理業の登録の有無 記載がありません
想定する物件の条件(面積・構造・価格) 記載がありません
手がけた件数や事業の規模 記載がありません

書かれていない項目が多いのは、この発表が提携そのものを知らせるものであり、案件の報告ではないためです。発表自身も、まずは両社の専門性を活かせる案件を一つずつ着実に形にし、実務を通じて連携体制を磨いていくと書いています。数字が出るとすれば、個別の案件が公表される段階になります。

株式会社地力のプレスリリース「株式会社地力とNOBORDERS株式会社、空き家・地域資源の事業化に向けたパートナーシップ契約を締結」のページのファーストビュー
引用キャプチャ この記事が扱っている発表そのもののページです。物件取引とその後の事業づくりを切り離さないという説明と、両社が持ち寄る専門性が同じページに置かれています。 出典:株式会社地力とNOBORDERS株式会社、空き家・地域資源の事業化に向けたパートナーシップ契約を締結(株式会社地力 プレスリリース)(確認日 2026-09-28/表示のファーストビュー)

自分の案件に当てはめるときの順番

このニュースから持ち帰れるのは、確かめる順番です。

先に、その建物が住宅宿泊事業法の「住宅」に当たりうるかを見ます。台所・浴室・便所・洗面設備の4つが揃っているか、足すことができるか。そして誰も住んでいない家屋であれば、入居者の募集が行われている家屋か、随時その所有者等の居住の用に供されている家屋に当たりうるか。ここが定まらないうちは、間取りや内装の話は決められません。

次に、上限のほうから収支の枠を置きます。年間提供日数の上限と、所在地の条例による制限です。枠を出してから取得価格と改修費を当てると、成立しない条件が早く分かります。旅館業の許可を取る入口を選ぶなら、建物に求められるものも手続きの相手も変わるため、そこも先に決めることになります。

最後に、人に頼む範囲を切り出します。今回の発表は、不動産の側と宿泊の側で扱う範囲が分かれていることを前提に、案件ごとに組むという形を示したものです。自分の案件でも、誰に何を頼むのかを取得前に決めておけば、契約を済ませたあとで運び直す手間が減ります。制度上の取り扱いと、自分の物件で必要な手続きについては、届出先である都道府県知事等の窓口に確認してください。この記事は公表された発表の記載を整理したもので、特定の事業者のサービスを推奨するものではありません。

このメディアの運営元について

myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。

サービスの内容を見る オーナー登録に進む