Booking.comに部屋を出すと、支払いは後から来ます。宿泊客が泊まって出発し、その翌月に請求書が届き、期限までに自分で払う。代金から先に引かれて残りが振り込まれる形とは、現金が動く順番が逆です。収支表の手数料欄を埋めるとき、ここを取り違えると、売上の月と支出の月がずれます。
そのうえで、いくら払うのかは公開資料から分かりません。Booking.comが宿泊施設向けに公開している一般取引条件には、コミッションの計算方法は書かれていますが、料率そのものは「本契約に定める関連するコミッション料率」とだけ書かれ、数値がありません。率は施設ごとの契約で決まります。観光庁は、住宅宿泊仲介業者の業務として、住宅宿泊仲介業務に関する料金を定めて営業所に掲示するかインターネットで公開することを挙げていますが、民泊向けの料率そのものは、この記事で読んだ公開ページには見当たりませんでした。
ただ、率が分からなくても確かめられることがあります。何に対して率が掛かるのか。泊まらなかった予約はどう扱われるのか。いつ請求され、いつまでに払うのか。自分のサイトの価格をどこまで動かせるのか。手数料に関わる税は誰の責任なのか。これらは契約条件の文面と、日本の公的資料のほうに書いてあります。この記事では、公開されている宿泊施設向けの一般取引条件(確認日 2026-10-02)と、観光庁・国税庁・公正取引委員会の資料だけで、その五つを順に読みます。料率の水準は書きません。
なお、ここで読む一般取引条件は宿泊施設に共通のもので、民泊(住宅宿泊事業)だけに適用される特則は、確認した範囲では見当たりませんでした。Booking.comが日本の制度でどの立場に当たるかはOTAとはで扱っています。料率を公表している経路との違いはAirbnbの手数料を見てください。
コミッションは四つの掛け算で決まる
条文は二段構えです。宿泊客がプラットフォームを通じて客室を予約するたびに、宿泊施設が計算されたコミッションを支払う(第2.3.1条)とし、その計算方法を次の条に置いています。第2.3.2条は、1件の予約あたりのコミッションの合計金額は、四つを乗じたものになるとしています。
| 掛ける要素 | 条文での書きぶり |
|---|---|
| 泊数 | その宿泊客がその宿泊施設で滞在した泊数 |
| 料金 | 1泊1室あたりの客室料金、ならびにその他の追加サービス料金および追加料金 |
| 客室数 | その宿泊客が予約した客室数 |
| 料率 | 本契約に定める関連するコミッション料率(該当する場合は、諸税およびその他の政府賦課金を含む) |
実務に効いてくるのは二つ目です。条文は、追加の料金のうち「提示された料金に含まれ、追加され、もしくはその一部であり、または宿泊客によるチェックイン前に宿泊客がプラットフォームを通じて選択するか承諾したもの」を計算に入れており、例として朝食、食事(ハーフボードまたはフルボード)、自転車レンタル、レイトチェックアウト/アーリーチェックイン料金、追加人員料金、リゾート料、追加ベッド、観劇チケット、サービス料を挙げています。
つまり、客室料金を低く見せて別建ての料金へ寄せても、計算の土台は小さくなりません。時間をずらす料金は分かりやすい例で、レイトチェックアウトとアーリーチェックインの料金が名指しで挙がっています。時間の前後をどう扱うかはアーリーチェックインとレイトチェックアウトにまとめました。
税の扱いも、この条の中に書かれています。客室料金に含まれる税は「付加価値税(VAT)、物品サービス税(GST)、またはこれらに類似する売上税のみ」と限定され、料率の側には「該当する場合は、諸税およびその他の政府賦課金を含む」という括弧が付いています。日本の消費税や宿泊税がここでどう扱われるかについての個別の記載は、このページにはありませんでした。自分の請求書で、どの金額に率が掛かっているのかを突き合わせるところです。
泊まらなかった予約でも請求される場合がある
キャンセルの扱いには、はっきりした境目があります。第2.6.3条は、キャンセル料が適用される時点より前に宿泊客が行ったキャンセルについてはコミッションは発生しないとし、この時点以降に宿泊客が行ったキャンセルについてはコミッションが発生するとしています。
境目を決めているのはBooking.com側ではありません。いつからキャンセル料が発生するかは、施設が設定したキャンセルポリシーで決まります。無料キャンセルの期間を長く取るか短く取るかという判断は、予約の入りやすさだけの問題ではなく、取り消された予約に手数料が付くかどうかの線引きでもあります。
請求される場面は、ほかにも挙げられています。第2.3.3条は、オーバーブッキングの場合について「請求された客室料金が免除されたか否か、また当該免除が成功したか否かを問わず、常に」コミッションを請求するとし、請求が行われたキャンセルまたはノーショー(無断不泊)についても請求するとしています。そしてコミッションは、宿泊施設に提供され、Booking.comが宿泊客に確認した確定済みの予約に従って計算される、とも書かれています。
ここから読めるのは、手数料が泊数ではなく確定した予約に付いているということです。最初から予約が入らなかった空室より、予約が入ってから崩れたときのほうが、手数料の計算は追いかけにくくなります。予約が崩れる場面を想定して、どの時点から料金が発生するかを決めておく必要があります。
請求は翌月、支払いは請求書の日付から14日以内
お金が動く順番も条文で決まっています。第2.4.1条は、コミッションは宿泊客の出発(予定)日の翌月に請求され、支払われるとしています。例外として挙げられているのは二つで、宿泊施設が客室料金の請求を免除することに同意した場合と、施設のキャンセルポリシーに基づいてBooking.comを通じて無料のキャンセルが行われた場合です。
第2.4.2条は、請求書が月次で処理され、管理画面を通じて宿泊施設に提供されるとし、宿泊施設は請求書の日付から14日以内に請求額を支払うとしています。
| 時点 | 起きること |
|---|---|
| 宿泊客の滞在と出発 | この予約のコミッションが確定する |
| 出発(予定)日の翌月 | コミッションが請求される(請求書は月次で処理され、管理画面に出る) |
| 請求書の日付から14日 | 支払いの期限 |
稼働の高い月の手数料は、その翌月に出ていきます。月ごとの資金を見るときは、売上の月と手数料の月をずらして置いたほうが実態に合います。固定費と変動費の分け方は民泊のランニングコストに、確定値から埋めていく枠組みは民泊の収支計画にまとめてあります。
契約そのものの終わり方についても条文があります。第7条の後半には、通知期間を置かずに解除できる場合が並んでいます。支払いの期限は、請求書の処理の話にとどまらないということです。
価格には「等価性」の条項が掛かっている
第2.2条は等価性の条項です。第2.2.1条は、宿泊施設がBooking.comに対して料金および条件の等価性を提供するとしています。同じ文書には「限定的等価性の対象国」という区分があり、日本はその一覧に挙げられています。ほかに並んでいるのはアルメニア、オーストラリア、ブラジル、中国、ジョージア、中華人民共和国の香港特別行政区、イスラエル、韓国、トルコ、イギリス、ニュージーランドです。等価性の及ぶ範囲は国によって違い、日本は限定された形の対象国として扱われています。
日本では、宿泊予約サイトの同等性条件について公的な記録も残っています。公正取引委員会は令和4年3月16日、Booking.com B.V. から申請があった確約計画を認定したことを公表しました。違反被疑行為として挙げられたのは、宿泊施設運営業者との契約において、宿泊料金および部屋数について他の販売経路と同等または他の販売経路よりも有利なものとする条件を定め、その遵守を要請していた行為で、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)に違反する疑いがあるものとして取り上げられています。このうち宿泊料金のナロー同等性条件は違反被疑行為から除かれています。
自社サイトを安くできるかどうかは、この二つを重ねて読む話になります。いま自分が結んでいる契約の等価性条項がどこまでを対象にしているのか、そして公表された記録でどこまでが問題にされたのか。表示の側には景品表示法という別の関門もあります。確認の順序は最低価格保証を掲げる前にに整理しました。自社の経路そのものを太くしていく話はOTA依存を減らす方法です。
コミッションに関わる税は、宿泊施設の責任と書かれている
第2.4.3条は、税の責任を宿泊施設の側に置いています。宿泊施設は、関連する税規則および慣行、ならびに税当局からの要請に従って、コミッションに関連して納付すべき諸税の源泉徴収および報告について責任を負うとされ、コミッションに適用される諸税と、源泉徴収および申告を怠ったことに関連して課された遅延利息および罰金の納付と送金も、宿泊施設が負担するとされています。Booking.comからの要請があれば、納税証明書もしくは免税証明書の写しを提供するという条項も続きます。
日本側の扱いを考えるうえで前提になるのは、相手が国外の事業者であることです。観光庁が公表している住宅宿泊仲介業者のリストには、Booking.com B.V. が登録番号S0044として載っており、所在地はオランダです(令和8年6月22日時点のリストで、住宅宿泊仲介業者は66社)。
国税庁は、国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質または当該役務の提供に係る取引条件等から、受ける者が通常事業者に限られるものを「事業者向け電気通信利用役務の提供」とし、これを受けた国内事業者が特定課税仕入れとして申告・納税する方式(リバースチャージ方式)を示しています。ただし経過措置があり、一般課税で課税売上割合が95パーセント以上の課税期間、または簡易課税制度などが適用される課税期間については、当分の間、特定課税仕入れはなかったものとされます。
自分の支払いがこれに当たるかどうかを、この記事で断定することはできません。役務の区分の判定も、課税売上割合の計算も、事業者ごとの状況で変わります。最終的な判断は所轄の税務署や税理士に確認してください。一方で宿泊料そのものの扱いははっきりしています。国税庁は、住宅の貸付けを非課税としつつ、貸付けに係る期間が1か月に満たない場合と旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合を除くとし、「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業(いわゆる民泊)も、旅館業法に規定する旅館業に該当しますので、非課税の対象となりません」と書いています。
解約は15日間の通知でできる。義務は契約の外に残る
第7.1条は、各当事者が15日間の通知期間を設けて相手方に書面で通知することにより、理由を問わずいつでも契約を終了できるとしています。掲載をやめる判断そのものは、この条文の範囲でできることになります。
争いになったときの枠組みも書かれています。第11.5条は、本契約がオランダの法律のみに準拠し、オランダ、アムステルダムの管轄裁判所に専属的に服するとしています。手数料の計算や請求をめぐる争いは、この枠の中の話です。
一方で、日本の法令上の義務はこの契約の外にあり、掲載をやめても消えません。第5.1条の表明および保証では、宿泊施設が必要なすべての許認可、ライセンス、政府認可を保持していること、関連する税務当局に正当に登録されていることが挙げられています。民泊でこれに当たるのが届出と届出番号です。届出番号の入れ方と仲介業者側の照合はAgodaに民泊を掲載するで、委託先として使える相手の判定はOTAとはで扱っています。
自分の契約書で見る三か所
料率が公表されていないこの経路では、読む場所が決まっています。一つ目は料率で、契約書に書かれた数値です。二つ目はキャンセルポリシーで、コミッションが発生し始める時点を自分で決めている部分です。三つ目は等価性の条項で、自社サイトの価格をどこまで動かせるかが書かれています。
この三つが分かれば、予約1件あたりの手数料は自分で計算できます。泊数と客室数は予約のとおり、料金は追加の料金まで含めた金額、率は契約書の数値。請求は翌月で、支払いは請求書の日付から14日以内。あとは、その支出が売上の月とずれることを収支表に反映するだけです。
この記事で書けなかったのは料率だけです。書けない理由も公開されている文面のとおりで、条文が契約へ委ねています。管理画面のどこで自分の料率を確認できるのかについても、公開ページでは確かめられませんでした。見積もりで埋めずに、契約書の数値をそのまま使ってください。
このメディアの運営元について
myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。