清掃料金の欄に金額を入れる場面で、たいてい先に探すのは相場です。ところがこの欄は、他の料金とは単位が違います。宿泊料は泊数で増え、追加人数の料金は人数で増えますが、清掃料金は1回の予約につき1回だけ請求されます。泊数にも人数にも連動しません。この違いを押さえずに金額だけを決めると、1泊の予約と1週間の予約で、同じ金額がまったく違う意味を持つことになります。
この記事が扱うのは金額ではなく、清掃料金という料金欄が持っている単位です。1予約に1回という単位、その単位で回収できる作業と回収できない作業、そして名目を分けても制度の側は宿泊料として見るという三つを、仲介サイトの公表資料と公的機関の資料で確かめます。清掃の作業そのものと法令上の義務は民泊の清掃で扱ったので、ここでは料金の側だけを見ます。
先に、確認できなかったことを書きます。民泊の清掃料金の相場を集計した公的な統計を確認できませんでした。1件あたりの所要時間の目安も同じで、裏づけとなる資料がありません(確認日 2026-10-21)。そのためこの記事には「清掃料金は何円が妥当」という表が出てきません。代わりに、金額を決める前に確定させておく条件を並べます。
清掃料金は、泊数にも人数にも連動しない
Airbnbのヘルプセンターは、清掃料金を「予約に適用される可能性のあるさまざまな手数料のひとつ」と位置づけ、1回の予約につき1回限りの請求となると説明しています。さらに、金額を2種類に分けて設定できることが示されています。
| 項目 | 公表されている内容 |
|---|---|
| 短期滞在向け清掃料金 | リスティングを1泊または2泊だけ予約したゲストに、標準よりも低い清掃料金を提供したい場合に設定する |
| 標準清掃料金 | すべての宿泊予約に請求される。短期滞在向け清掃料金を設定している場合は3泊以上の予約に請求される |
| 請求の回数 | 1回の予約につき1回限りの請求 |
| どちらが適用されるか | ゲストの滞在日数に基づいて予約時に決定される |
| 宿泊完了後 | ゲストに清掃料金は返金されない |
区分の境目が1泊・2泊と3泊以上に置かれている点が、この料金の性格をよく表しています。作業の量は泊数で決まらないのに、負担の重さは泊数で決まってしまうからです。1泊の予約でも、退室後に行う作業はほぼ同じです。それでも1泊の予約に清掃料金の全額が乗れば、宿泊者の目に入る総額は宿泊料の何割も増えて見えます。短期滞在向けの金額を別に置けるのは、この見え方を調整するための仕組みです。
泊数の分布を見ないと、金額を決めても揃わない
上の図から出てくる結論は一つです。清掃料金の設計は、自分の予約の泊数の分布とセットでしか決められません。1泊の予約が大半を占める物件と、5泊以上が多い物件では、同じ金額が宿泊者に与える印象も、自分が受け取る1泊あたりの額も別物になります。
そこで、金額を決める前に手元の予約明細から数えておくものが三つあります。ひとつめは泊数ごとの予約件数です。1泊、2泊、3泊以上に分けるだけでよく、短期滞在向けの金額を置くかどうかがここで決まります。ふたつめは1予約あたりに実際に出ている清掃の支出です。委託先への支払い、リネンの洗濯、消耗品を1回分として足した額で、これが回収したい相手になります。みっつめは入れ替わりの回数です。予約の件数と入れ替わりの回数は、連泊の割合によってずれます。
この三つがそろうと、清掃料金は「いくらにするか」ではなく「どの泊数の予約で、支出の何割を回収するか」という問いに変わります。1泊の予約で全額を回収しようとすると総額が跳ね、連泊に寄せると1泊の予約で足が出ます。どちらを選ぶかは、分布を見ないと決められません。受け取った金額が手元に残るまでの段は民泊の収益はどう決まるかで整理しています。
なお、宿泊完了後は清掃料金が返金されないと示されている一方で、解除された予約では清掃料金も予約ごと消えます。解除が増えれば、入れ替わりが起きないまま回収の機会だけが減ります。この向きの話は民泊のキャンセル率を下げる順序で扱いました。
清掃料金で回収できるのは、入れ替わりの層だけ
ここから支出の側を見ます。清掃の作業は、法令の求め方からして発生する単位が三つに分かれています。1予約に1回の料金が対応できるのは、そのうち一つだけです。
観光庁は、住宅宿泊事業者は宿泊者の衛生の確保を図るため、届出住宅について各居室の床面積を宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上確保するとともに、定期的な清掃、換気及びその他の必要な措置を講じる必要があるとしています。そのうえで、頻度が明示されている作業も挙げています。寝具のシーツ、カバー等直接人に接触するものについては宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える必要があり、循環式浴槽や加湿器を備え付けている場合は宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯は抜き、加湿器の水は交換し、汚れやぬめりが生じないよう定期的に洗浄等を行うよう示されています。
一方で「定期的な清掃、換気」の間隔は示されていません。設備や備品を清潔に保ち、ダニやカビ等が発生しないよう除湿を心がけることも求められていますが、これは予約が入っていない期間にも発生します。さらに、宿泊者が感染症に罹患し、またはその疑いがあるときは保健所に通報してその指示を受け、使用した居室、寝具および器具等を消毒・廃棄する等の必要な措置を講じる必要があるとされています。こちらは予約の数とまったく無関係に、起きたときだけ発生します。
つまり清掃料金を上げても、下の二層は1円も回収されません。稼働が落ちた月に清掃の支出が比例して減らないのは、この構造のためです。下の二層は宿泊料へ織り込むか、自己負担として持つことになります。清掃料金という欄だけを見ていると、この部分が見えないまま「清掃費は回収できているはず」という読み方になります。
寝具の枚数は、この上の層の作業量を直接決めます。入れ替わるごとに取り替えるため、予備の枚数が足りないと次の予約に間に合いません。枚数の考え方は民泊のリネンで扱っています。
名目を分けても、宿泊料からは外れない
料金を別建てにすると、別の種類の金額になったように見えます。制度の側はそう見ていません。
厚生労働省は、旅館業に当たるかどうかの判断について、「宿泊」とは寝具を使用して施設を利用することであると示しています。そして「宿泊料」については、名目だけではなく、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされる休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費が該当するとしています。これらを徴収して人を宿泊させる営業は、別の名目であっても旅館業法の許可が必要になるという説明です。
ここから分かることは二つあります。ひとつは、清掃費だけを受け取る形にしても、宿泊料を受けていることになるということです。宿泊料を取っていないつもりで知人へ貸し、清掃費の名目で金銭を受け取る運用は、この判定の対象に入ります。もうひとつは、料金表の行をいくつに割っても、判定の結果は変わらないということです。清掃料金を別欄にしたことで何かの適用が外れる、という期待は成り立ちません。
個別の当てはめは所管の窓口の判断です。この記事では、公表されている判定のしかたを示すところまでにします。
宿泊税の判定でも、清掃料は宿泊料金の内側に入る
同じことが税の側でも起きます。東京都は宿泊税の課税標準となる「宿泊料金」について、含まれるものと含まれないものを列挙しています。
| 区分 | 公表されている例 |
|---|---|
| 宿泊料金に含まれるもの | 宿泊料、宿泊者の意思に関わりなく請求される寝具使用料、入浴料、寝衣代、冷暖房料、清掃料、サービス料、奉仕料 |
| 宿泊料金に含まれないもの | 宿泊に伴い提供される食事及び飲食に係る金額、遊興・飲食・宴会等の費用、租税(消費税、入湯税等)、自動車代・たばこ代・電話代・クリーニング代などの立替金 |
「清掃料」は含まれる側、「クリーニング代」は含まれない側に並んでいます。名前が似ているのに扱いが逆なのは、後者が宿泊者のために立て替えた金銭として挙げられているためです。自分が行う清掃の料金と、宿泊者が依頼した衣類のクリーニングを立て替えた額は、同じ「クリーニング」の語でも別の行に入ります。
東京都では、特別徴収義務者が各月の初日から末日までの間の宿泊に係る宿泊税について翌月の末日までに申告するとされ、帳簿に宿泊年月日、宿泊料金、宿泊者数、宿泊税の課税対象となる宿泊者数及び宿泊税額を記載して申告納期限から5年間保存するよう示されています。清掃料金を別建てにしている場合、帳簿の「宿泊料金」の欄には合算した額が入ることになります。
ただし住宅宿泊事業が宿泊税の課税対象かどうかは自治体によって違い、同じ東京都でも時期によって変わります。都は令和9年4月1日から新法民泊と特区民泊を対象に加え、税率を宿泊料金の3%、1人1泊1万3千円未満を課税免除とすることを示しています。自治体ごとの違いと区分の境界は民泊のADRで並べたので、ここでは重ねません。清掃料金を動かす前に、所在地の自治体のページをその日付で確認してください。
なお、仲介サイトの手数料は清掃料金を含む小計にかかることがあります。料率が掛かる範囲はAirbnbの手数料で扱っています。
支払う側は、居室の数と不在で相手が決まる
受け取る側を決めたら、支払う側を見ます。清掃を誰に頼めるかは、自分の都合ではなく制度の側で決まっています。原価を自分で決められるかどうかが、ここで分かれます。
| 条件 | 清掃を頼める相手 |
|---|---|
| 居室の数が5以下で、宿泊させる間に不在にならない | 自ら管理業務を行える。清掃等の一部の事実行為を、住宅宿泊管理業者ではない専門業者に行わせることが可能 |
| 居室の数が5を超える、または宿泊させる間に不在となる | 住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者へ委託する。委託を受けた管理業者が一部に限り再委託することは可能 |
観光庁は、一の届出住宅の居室の数が5を超える場合、または届出住宅に人を宿泊させる間に不在となる場合に、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者へ委託する必要があるとしています。そのうえで、常時届出住宅内にいる住宅宿泊事業者が、清掃等の一部の事実行為を住宅宿泊管理業者ではない専門業者に行わせることは可能としています。ただしこの場合も法第5条から第10条までの規定は事業者に適用されるため、違反等があった場合には委託者の責任になると示されています。
料金の設計に効いてくるのは、上の表の下の行です。委託義務がかかる場合、清掃は管理業務の一部として委託先の業務になります。清掃だけを安い相手に切り出して原価を下げる、という調整の余地は小さくなります。自ら管理業務を行える条件は民泊の自主管理、委託先の選び方は民泊の運営代行にあります。
別建てにするか、宿泊料へ織り込むか
ここまでを踏まえると、清掃の支出を回収する置き場所は二つに絞られます。どちらを選んでも制度上の扱いは同じで、変わるのは泊数による見え方と、受け取る額の増え方です。
| 置き方 | 1泊の予約 | 連泊の予約 | 空室が続いた月 |
|---|---|---|---|
| 清掃料金として別建て | 清掃料金の全額が1泊分に乗り、総額が重く見える | 泊数で割られ、1泊あたりの負担は下がる | 予約が無ければ回収は0 |
| 宿泊料へ織り込む | 1泊あたりの表示単価が上がる | 泊数に比例して受け取る額が増える | 予約が無ければ回収は0 |
| 短期滞在向けを併用 | 1泊・2泊だけ低い金額を適用できる | 3泊以上は標準の金額が請求される | 予約が無ければ回収は0 |
どの置き方でも、空室が続いた月の回収は0です。定期的な清掃と換気はその月にも発生しますから、この行だけは置き場所を変えても埋まりません。年間提供日数の上限が180日と決まっていることもあって、売れない期間は構造として生まれます。日数の数え方は民泊の180日にあります。
確認できなかったこと
推測で埋めずに残します。いずれも2026-10-21時点で、一次情報を確認できませんでした。
清掃料金の相場。全国または地域の平均を集計した公的な統計を確認できませんでした。広さ、居室の数、設備の構成で変わるため、他所の金額を当てても自分の支出とは一致しません。
清掃1件あたりの所要時間の目安。裏づける公的な資料がありません。時間を決める要因は民泊の清掃に挙げたので、自分の物件で一度測ってください。
1予約あたり定額の清掃料金を、1人1泊あたりへどう割るか。宿泊税の税率は1人1泊の宿泊料金で区分されますが、1予約に1回だけ請求する金額を人数と泊数でどう按分するかについての記載を、確認した公表ページでは見つけられませんでした。区分の境界に近い金額を設定する場合は、所管の自治体へ確認してください。
宿泊者が任意で申し込む追加清掃の扱い。東京都の列挙は「宿泊者の意思に関わりなく請求される」ものを対象にしています。滞在中の清掃を宿泊者が選んで申し込む形がどちらに入るかは、この列挙からは判断できませんでした。
決める順序
最後に、金額を決めるまでの順序に並べ直します。金額から始めないことが要点です。
- 予約明細から、泊数ごとの件数と入れ替わりの回数を数える
- 1回の入れ替わりで実際に出ている支出を、委託料・洗濯・消耗品に分けて足す
- 定期的な清掃と換気にかかる分を、上の支出から切り離す(清掃料金では回収できません)
- 委託義務がかかるかを確かめ、清掃の発注先が選べる立場かを確認する
- 1泊・2泊の予約に短期滞在向けの金額を置くかを、泊数の分布から決める
- 所在地の自治体の宿泊税のページで、課税対象かどうかと区分の境界を確認する
- 決めた金額と区分を、根拠と一緒に書き残す
この順で進めると、清掃料金は相場から借りてくる数字ではなく、自分の支出と予約の形から出てくる数字になります。来月の数字が動いたときに、料金のせいなのか分布のせいなのかを切り分けられるのも、この書き残しがあるからです。
次に読むもの
清掃の作業と法令上の義務は民泊の清掃、単価そのものを動かすときに連動する仕組みは民泊のADR、仲介サイトに引かれる額はAirbnbの手数料にあります。
この記事は、2026-10-21に確認した公表資料の記載を整理したものです。仲介サイトの料金の仕様と自治体の宿泊税は改定が続いているため、金額を決める前に出典のページを直接確かめてください。個別の税務や法令の当てはめは、所轄の税務署と届出先の自治体に確認してください。
このメディアの運営元について
myHotelsメディアは、民泊予約システムを提供する myHotels が運営しています。 記事は自社サービスの利用を前提にせずに書いており、料金や条件は下のページで確認できます。